学びのポイント
●中枢神経興奮症状に加え,著しい交感神経興奮症状や,高体温を呈する場合にアンフェタミン類の急性中毒を疑う.
●若年者の脳出血,心筋梗塞,大動脈解離は,アンフェタミン類中毒も鑑別の1つとなりうる.
▼概説
アンフェタミン類は,違法薬物のいわゆる「覚醒剤」であり,その主成分はメタンフェタミンだが,アンフェタミンも混在することが多い.疲労感の軽減,気分高揚,多幸感,性感の増強,無食欲などを目的として乱用される.メタンフェタミンとアドレナリン,アンフェタミンとノルアドレナリンは化学式が類似している.MDMAは,メタンフェタミンの化学式を一部変えた合成薬物である.中枢神経興奮症状に加え,著しい交感神経興奮症状や,高体温を呈する場合にアンフェタミン類の急性中毒を疑う.若年者の脳出血,心筋梗塞,大動脈解離は,アンフェタミン類中毒も鑑別の1つとなりうる.薬物簡易スクリーニングキットトライエージDOAで,AMP(アンフェタミン類)が陽性となる.
▼毒性のメカニズム
➊中枢神経興奮
シナプス間隙での,モノアミン(ノルアドレナリン,ドパミン,セロトニンなど)の遊離促進・再取り込み阻害により,中枢神経興奮を起こす.
➋交感神経興奮
シナプス間隙での,カテコールアミンの遊離促進・再取り込み阻害・分解阻害により,間接的交感神経興奮作用をするほか,アドレナリン受容体にも弱く直接作用する.
▼中毒症状
➊中枢神経興奮症状
不穏,興奮,幻覚,妄想,昏睡,けいれん,頻呼吸,舞踏病アテトーシス様運動など.
➋交感神経興奮症状
発汗,散瞳,固縮,高血圧,頻脈,頻呼吸,不整脈など.時に心筋梗塞,大動脈解離,脳出血,横紋筋融解症,心不全,肝不全,腎不全,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrome:DIC)に至り重症化することもある.
▼治療
➊全身
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