診療支援
治療

2 グリホサート界面活性剤含有除草剤
glyphosate surfactant herbicide(GlySH)
中村 光伸
(前橋赤十字病院・高度救命救急センター・センター長)

▼概説

 グリホサート界面活性剤含有除草剤(glyphosate surfactant herbicide:GlySH)は安全性の高い除草剤としてホームセンターで市販されているため,除草剤による急性中毒のなかではかなりの割合を占めている.医療機関での治療を行うにあたり,除草剤の種類により含有量(グリホサートの濃度1~41%)が異なるため,救急隊や家族による現場からの容器などの持参が治療方針の決定に有効である.また,初診時に症状が乏しいもしくは軽症であっても集中治療室などでの全身管理が必要であることが多い.

▼毒性のメカニズム

 グリホサート界面活性剤含有除草剤(ラウンドアップなど)はグリホサート塩と界面活性剤を主成分としている.その他に,消泡剤,着色剤,殺菌剤,pH調整用無機イオンなどの成分が含まれている.グリホサート塩としては,イソプロピルアミン(isopropylamine:IPA)塩などが用いられている.界面活性剤としては非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンアミン(polyoxyethyleneamine:POEA)などが用いられている.動物研究では,グリホサート塩は意識障害や腎障害をきたし,POEAは消化管への腐蝕作用,肺障害,心筋抑制による低血圧を認めた.そのため,意識障害や腎障害,代謝性アシドーシスはグリホサート塩による中毒症状,消化管の腐蝕作用,肺障害,低血圧は界面活性剤による中毒症状とする研究もある.しかし,グリホサート塩と界面活性剤のそれぞれによる毒性を特定することは困難で,2つの成分が絡んで多様な毒性を発揮するという研究者もいる.

▼中毒症状

 急性中毒のほとんどは軽症で,一過性に悪心,嘔吐,下痢,腹痛などの消化器症状を認めるのみである.中等症では,消化管への腐蝕作用による消化管出血や,一過性の腎障害,肝障害を認めることがある.重症では,主として界面活性剤

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