▼概説
酸・アルカリは工業用品として,トイレや台所洗浄剤など家庭用品として身近に存在する.中毒事例の好発年齢は,小児と成人で二峰性をとるのが特徴である.歩行や這うことが可能になる1~5歳までの小児と,自殺企図による30~40歳代の成人に多い.生体組織に接触すると化学反応により組織損傷を引き起こすが,物質により濃度,pHが異なり,損傷程度は濃度,pH,性状,粘稠度,摂取量,接触時間,さらに自殺企図の有無により影響される.
▼毒性のメカニズム
酸はH+イオンが組織と結合し,凝固壊死を起こす.固い焼痂を形成するため,拡がりは限定的とされる.アルカリはOH-イオンが蛋白融解から,上皮や粘膜下層,さらに筋層に拡がり,早期に虚血,血栓を形成し,脂肪変性,組織融解を引き起こす.深度は,組織液により中和されるまで損傷するため,長く組織にとどまり,損傷は酸と比較し強くなるとされる.消化管組織の曝露から48時間を超えると組織壊死と壊疽をきたす.受傷後1,2週間で組織の浮腫は軽減するが血管新生が始まり,瘢痕化が3週間で発生する.再上皮化は約6週間にわたるが,その間に消化管の狭小化,線維化に至る.
▼中毒症状
経口による摂取では,物質の性状,損傷部位によりさまざまな症状を呈する.
粉末や固形物は口腔や咽頭に付着し,直後から口腔内の痛み,嚥下痛,嚥下困難,流涎などの症状が出現するが,接触の数時間後に遅れて症状が出現することもある.液体では早期に消化管を通過するため口腔内の痛みだけでなく,無症候性から,嚥下痛,嚥下困難,流涎などの局所症状に加えて,胸痛や腹痛,さらには呼吸困難,不穏状態などさまざまな症状を呈する.全身状態として血圧低下など,循環不全,ショックなどを呈する場合は,穿孔,さらに臓器障害が考えられ,胸痛,反跳痛,筋性防御などの腹膜炎,心窩部痛や吐血は,胃を含めた消化管損傷が考えられる.
▼治療
➊全