▼概説
メタノールは家庭用品や工業用品の溶媒,アルコールランプの燃料などに用いられ,エチレングリコールはエンジンの不凍液や保冷材などに用いられている.小児や高齢者の誤飲事故のほか,自殺目的の意図的な服用やアルコール依存症患者が酒の代わりに摂取することによる急性中毒などが散見される.
いずれも非常にまれではあるが,重症になると死亡率も高いので注意が必要である.
▼毒性のメカニズム
メタノールは無色透明の液体であり,沸点は64.7℃で,揮発性が高い.また,可燃性がある.経口摂取によるヒトの失明を生じる中毒量は6~15mL,致死量は30~100mLなどとあるが,文献によって多少異なる.
エチレングリコールは粘稠な無色透明の液体であり,沸点は197.6℃で,比較的揮発性は低く,融点は-12.6℃と比較的低い.また,可燃性がある.経口摂取によるヒトの中毒量は1.0~1.5mL/kg,致死量は1.4~1.6mL/kgなどとあるが,こちらも文献によって多少異なる.
メタノールおよびエチレングリコールは,消化管からすみやかに吸収された後,肝臓でアルコール脱水素酵素により,それぞれホルムアルデヒドおよびグリコアルデヒドに代謝される.さらに,前者は6~30時間の潜伏期を経てギ酸に,後者は4~12時間の潜伏期の後にグリコール酸,グリオキシル酸を経てシュウ酸に代謝されるが,これら代謝産物のほうが,親物質よりはるかに毒性が強い.ギ酸は視神経,中枢神経系,心循環器系において,シトクロム・オキシダーゼ阻害作用を発揮して細胞呼吸を阻害する.グリコール酸およびグリオキシル酸は,中枢神経系,心循環器系において,クエン酸回路を抑制することで細胞呼吸を阻害し,さらにシュウ酸に変換されると,カルシウムと結合して不溶性のシュウ酸カルシウムを形成し,腎臓,肝臓,中枢神経系,肺,心臓,消化管などに沈着して臓器毒性を発揮する
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