▼概説
従来は青酸カリ(シアン化カリウム)や青酸ソーダ(シアン化ナトリウム)などの中毒事故や意図的な摂取などがあったが,近年は火災時にポリウレタンなど建築素材の燃焼により発生する青酸ガス(シアン化水素)が多い.
▼毒性のメカニズム
シアン化カリウム,シアン化ナトリウムは,服用すると胃酸と反応してシアン化水素となる.消化管よりすみやかに吸収され,摂取後1時間で血中濃度はピークに達する.シアン化水素は吸入により肺からも吸収される.
シアン化物を摂取するとシアンイオン(CN-)は細胞内ミトコンドリアにあるチトクローム・オキシダーゼの活性中心にあるヘム鉄(Fe3+)と結合して失活させる.このため好気性代謝が阻害され細胞内のATPは急速に枯渇する.また,細胞が動脈血から酸素を取り込むことができなくなる.さらに,嫌気性代謝が進行し,乳酸が蓄積し代謝性アシドーシスとなる.細胞が利用できるATPと酸素の減少,およびアシドーシスは細胞の機能障害や細胞死の原因となる.
▼中毒症状
シアン化物の曝露の事実や可能性を確認する.呼気からアーモンド臭も参考になる.
軽症~中等症は悪心・嘔吐や腹痛といった消化器症状,動悸などの心血管症状,過換気など呼吸器症状,めまいや錯乱といった中枢神経症状が起こる.
重症の場合,昏睡やけいれん発作などの中枢神経症状,徐脈や低血圧,心室性不整脈などの心血管症状,呼吸困難や肺水腫などの呼吸器症状が生じる.静脈血の酸素飽和度は上昇するので低酸素症状でもチアノーゼを呈さない.また,皮膚や静脈血は鮮紅色となる.
▼治療
➊全身管理
呼吸と循環の安定化をはかる.好気性代謝を促すためと,火災の場合はCO中毒を伴っていることも多いため100%酸素投与を行う.必要があれば気管挿管や人工呼吸器管理を行う.けいれん発作にはジアゼパム薬薬やミダゾラム薬薬なども投与する.低血圧には輸液や昇圧薬なども投
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