疾患を疑うポイント
●換気が不十分な場所で練炭や囲炉裏を使用したあとの,頭痛,嘔気,めまいなど.
●家庭用ガスの不完全燃焼,排気ガス,火災などによる呼吸困難や意識障害など.
▼定義
一酸化炭素(carbon monoxide:CO)の曝露により吸収されたCOがヘモグロビン(Hb)などと結合することで,多岐にわたる症状を呈する疾患である.
▼病態
COとHbの親和性は酸素の200~250倍高く,カルボキシヘモグロビン(CO-Hb)を形成し,酸素運搬能低下による低酸素症を起こす.COとミオグロビン(Mb)の親和性は酸素の30~50倍高く,心筋の低酸素症を起こす.COはミトコンドリアのシトクロムcオキシダーゼと結合し,その機能を阻害する.
以上により,大脳白質や基底核などの壊死・脱髄,心筋障害などを引き起こす.
▼症状
中枢神経系が最も早く,ついで心筋が障害される.CO-Hb濃度とその症状の目安を以下に挙げる.
●10~20%:軽度の頭重感,脱力など
●20~30%:頭痛,嘔気など
●30~40%:激しい頭痛,嘔吐,めまいなど
●40~50%:呼吸・脈拍増加など
●50%~:意識混濁,けいれん,Cheyne-Stokes(チェーン-ストークス)呼吸,昏睡,呼吸停止など
▼診断
CO曝露歴や発生源の存在,来院時動脈血液のCO-Hb濃度10%以上,高乳酸血症,低酸素症による身体症状がみられた場合はCO中毒を疑う.
頭部MRIやCTの典型所見は両側淡蒼球の異常信号だが,急性期の異常所見は白質病変など多彩である.神経学的症状がみられてもMRIで異常所見を認めないこともある.
喫煙者のCO-Hb濃度の正常値は5~15%で,10%程度では判断が困難であり,身体症状と合わせて評価することが望ましい.また,代謝性アシドーシスがみられれば,CO-Hb濃度が低値でも急性CO中毒を疑う.
▼治療
CO曝露後,検査所見や身体症