▼概説
植物による中毒には,食用植物と類似しているための誤食による中毒(トリカブト,ドクゼリ,スズラン,キョウチクトウ,ヒガンバナ,スイセン,ハシリドコロ,チョウセンアサガオ,ヨウシュヤマゴボウ,イヌサフランなど)のほか,本来食用であるがその摂取量や発育環境などにより中毒を引き起こす例(ウメ,ギンナン,ジャガイモ,サトイモ,ナツメグなど)がある.また,自殺・他殺目的による中毒もある.トリカブト中毒はモミジガサ(シドケ)やニリンソウといった山菜との誤食,自殺・他殺目的のほか,漢方薬や蜂蜜摂取による報告もある.
以下トリカブト中毒について述べる.
▼毒性のメカニズム
原因物質はアコニチン類のアコニチン,メサコニチン,ヒパコニチン,ジェサコニチンである.これらは,トリカブトの根や茎,葉,花などすべての部位に含まれ,特に根の含有量が多い.ヒトの最小致死量は総アコニチン類として2~4mgといわれており,根の場合は,種類や産地などにもよるがおおむね1g程度である.
アコニチン類は,細胞膜にあるナトリウムチャネルのサイト2レセプターに結合し,ナトリウムの透過性を増大させ,さまざまな神経症状や不整脈を生じさせる.死因は主に心室細動に起因する心停止である.
▼中毒症状・診断
症状は口囲,四肢のしびれに始まり,続いて嘔気・嘔吐,胸部不快感,動悸(不整脈)を発症することが多い.これらの症状に加え,山菜摂取などの病歴や周囲の状況からある程度診断できることが多い.
生体試料からアコニチン類が検出されれば診断は確定するが,尿のほうが血液よりはるかに濃度が高いため,診断にはより有用である.検体を保存する場合は,分解を防ぐため冷凍(できれば-80℃)がよい.
▼治療
➊全身管理
静脈路確保,検体採取,必要に応じて気道確保を行うとともに,12誘導心電図の記録,心電図の持続モニターを行う.
➋吸収の阻害
服毒後早期の場
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