診療支援
治療

(1)ドクツルタケ類など
Amanita virosa
小野寺 誠
(福島県立医科大学教授・地域救急医療支援講座)

学びのポイント

●ドクツルタケ類に含まれる毒成分であるアマトキシン類により急性肝不全に進行することがある.

●経過中に消化器症状が回復する偽回復期に注意.

▼概説

 わが国におけるキノコによる食中毒発生件数は毎年50件前後である.発生地域は日本全国に及び,特に新潟県,福島県,山形県,長野県に多く,発生時期は9月と10月に集中している.このうち,ドクツルタケによる中毒は全体の1%台と少ないが,死亡事例としては本キノコが最多である.ドクツルタケ類(ドクツルタケ,タマゴテングタケ,シロタマゴテングタケなど)に含まれるアマニタトキシン群はキノコに含まれる毒成分のなかで最も毒性が強く,主な毒成分であるアマニチンは経口致死量がきわめて少なく,摂取数日後に発現する肝障害から急性肝不全へ進行することがある.

▼毒性のメカニズム

 ドクツルタケ類の毒はアマニタトキシン群と総称され,アマトキシン類,ファロトキシン類,ビロトキシン類の3つに区分される.このうちファロトキシン類とビロトキシン類は構造的に類似しており,生体において小腸粘膜を傷害し嘔吐・腹痛・下痢などの消化器症状を生じる.一方,主な毒成分であるアマトキシン類のアマニチンは,加熱や乾燥などあらゆる調理方法によっても破壊・変性を受けず,食後1~2時間で腸管より肝臓に取り込まれ,肝細胞での蛋白合成を阻害する結果,急激に肝壊死に陥る.アマニチンのヒトに対する経口致死量は0.1mg/kgで,これはドクツルタケ1本(約20g)に相当する.

▼中毒症状

 ドクツルタケ類による中毒症状は特徴的な臨床経過をとる.通常,6~12時間の潜伏期に続いて以下の3期に分けられる.

第1期(消化器症状期)

 嘔気,嘔吐,けいれん性の腹痛,激しい下痢で発症する.重篤例では電解質異常や脱水,低血圧を生じる.

第2期(偽回復期)

 消化器症状は軽快し,みかけ上治癒したかのようにみえるが,ア

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?