▼概説
シガテラ魚とは,赤潮の原因となるプランクトンの1つである有毒渦鞭毛藻Gambierdiscus toxicusが産生するシガテラ毒に汚染された魚類の総称である.シガテラ魚中毒は,食物連鎖により濃縮されたシガテラ毒を保有するシガテラ魚をヒトが摂食することにより,中毒症状を呈するものである.シガテラ毒を保有する可能性のある魚にはバラフエダイ,オニカマス,ウツボ,ヒラマサなど400種類以上があるが,すべてが毒をもっているわけではなく,毒の有無は外見では判断できない.中毒患者数は年間10~30人程度であるが,2007~2017年では死亡者はいない.
▼毒性のメカニズム
シガテラ毒は,シガトキシンのほか,マイトトキシンなど数種類の毒素が同定されており,コリン作動性活性やナトリウムチャネルの活性化を有している.脂溶性で熱に対しても安定で不活化されない.神経症状,循環器症状,消化器症状などを呈するが,詳細な毒作用のメカニズムは不明である.
▼中毒症状
魚を経口摂取したあと,30分から数時間ほどで,消化器症状が出現し,その後循環器症状,神経症状が出現する.症状は数か月持続することがある.以下に主な症状を挙げる.
●消化器症状:悪心,嘔吐,腹痛
●循環器症状:徐脈,血圧低下
●神経症状:めまい,頭痛,知覚過敏,口唇周囲のしびれ感,冷たい水に触れると熱く感じ,逆にお湯に触れると冷たく感じる,温覚と冷覚の逆転,ドライアイスセンセーション,筋肉・関節痛,脱力,けいれん
ドライアイスセンセーションとよばれる水など冷たいものに触れたときに電気刺激のような痛みを感じたり,冷水を口に含んだときに炭酸飲料を飲んだような「ピリピリ感」を感じたりする症状はシガテラ中毒に特徴的な所見である.
▼治療
対症療法が基本となる.食後早期であれば,吸収を抑制する目的で活性炭を投与する.特異的な解毒薬,拮抗薬はないが,摂取後4
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/D-マンニトール《マンニットール マンニットT》
- 今日の治療指針2023年版/マリファナ
- 今日の治療指針2023年版/金属フューム熱
- 今日の治療指針2023年版/揮発性有機化合物による中毒(シンナー吸入を含む)
- 今日の治療指針2024年版/ネオニコチノイド系農薬
- 今日の治療指針2024年版/水タバコ(シーシャ)
- 今日の治療指針2024年版/シガテラ(シガトキシン)
- 今日の治療指針2024年版/イッポンシメジ
- 今日の治療指針2024年版/アジサイ
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/14 アガサ・クリスティ 『三幕の殺人』
- 急性中毒診療レジデントマニュアル 第2版/11 アルバート・ホフマン博士とLSD