▼概説
傷病者が液体中に沈み,気道入口部が液体に浸かった状態(浸水)で窒息が生じる障害を溺水とよぶ〔本章「中毒・環境要因疾患を理解するためのポイント」の項(→)参照〕.自ら企図しない状況で発生した場合は不慮の事故ととらえられる.
▼疫学
日本における平成29年の人口動態統計によると40,329人が不慮の事故で亡くなった(全死因の第6位)が,このうち8,163人が不慮の溺死および溺水で亡くなっており,今や交通事故死(5,004人)よりも多くの方が亡くなる原因となっている.発生場所は家庭内が多く,とりわけ浴槽内での溺死および溺水は6,091人と,不慮の溺死および溺水の約2/3を占めている.浴槽に湯を張って入浴する日本特有の事情がかかわっているといえよう.
▼発症のメカニズム
液体中での浸水による窒息で発生する.
日本では,不慮の溺死および溺水の約2/3が浴槽内で発生しているが,家庭用の浴槽は通常深