▼概説
減圧症は,深い潜水や長時間の高圧環境からの急速な減圧時もしくは減圧後に,組織内もしくは血管内に微小な気泡が生じ発症する.
急性動脈ガス塞栓は,減圧時に肺胞の膨張による肺胞破裂を生じ,動脈内に気泡が移行することにより発症する.
減圧症と急性動脈ガス塞栓とも減圧時に発症することから,両者を合わせて減圧症状という.
▼発症のメカニズム
➊減圧症
気体はBoyle(ボイル)の法則に従い,圧力と体積は反比例する.水深10mでは環境圧は約2気圧,20mでは約3気圧,30mでは約4気圧となる.水深30mで空気を吸入すると,大気圧(約1気圧)と比較して4倍の窒素や酸素を吸入し,血漿に溶解する窒素や酸素も約4倍となる.血漿に溶解した窒素などの生理的不活性ガスは徐々に血管外組織に溶解し,代謝されず,最終的には圧力に比例して組織に溶解し飽和する.このため,深い潜水や長時間の高圧環境では,高濃度の生理的不