診療支援
治療

関節穿刺法と関節液検査
Joint puncture and synovial fluid analysis
西谷 江平
(京都大学 特定助教)

【概説】

 関節穿刺は関節液の検査,関節内に薬剤を注入する治療の両方に必要であり,整形外科診断治療において必須の手技である.関節液検査は外傷や炎症性関節炎の鑑別診断に重要であり,関節液の肉眼所見は診察室での診断補助に有用である.

【適応】

 関節穿刺はほとんどすべての関節に施行できるが,関節液採取目的の穿刺は主に肩,肘,手,股,膝,足など大きな関節に行われる.適応疾患は外傷や関節炎であり,診断補助に用いる.治療目的の穿刺は小関節にも行われ,主な適応疾患は変形性関節症,肩関節周囲炎,関節リウマチなどである.注入する薬剤としてはステロイド,ヒアルロン酸,局所麻酔薬や関節造影検査の造影剤などがある.関節液採取は18~21G針,薬剤注入は対象関節サイズに応じて22~27G針を使用する.


実施手順

 穿刺前にはアルコールだけでなく,ポビドンヨードもしくはクロルヘキシジンも使用し消毒を行う.皮膚異常部からの穿刺は避け,刺入部周囲に触れながら穿刺する場合は滅菌手袋を使用する.

 腱,神経,血管などの重要な組織を傷害することなく,関節腔へ針を進める.安全に行える部位は肩,膝関節であり,肘,手,足関節も穿刺は比較的容易であるが,関節腔が小さく,慣れていない場合は画像的補助が有効である.股関節は深部にあり,大腿動脈の拍動の外側から神経血管を避けて穿刺するが,確実に股関節に達するには画像的補助が望ましい.膝,肩関節穿刺は施行頻度が高く,以下に代表的な手技を述べる(図1-3).

【1】膝関節穿刺

(1)外側上方穿刺

 最も一般的な穿刺法であり,関節液を採取する場合はこの方法をとる.患者は仰臥位,膝関節は伸展~軽度屈曲位とし,膝蓋骨上外側角の高位で外側広筋の後方の陥凹を確認し,同部より穿刺する.

(2)前方外側穿刺

 薬剤投与に用いられる.患者は仰臥位もしくは座位,膝関節は90°屈曲位とする.膝蓋腱の外側,脛骨関節面の

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