診療支援
治療

サーモグラフィー
Thermography
河村 太介
(北海道大学大学院 助教)

【概説】

 体表から発せられる輻射熱を,赤外線を検知することで計測し,温度分布を表示する検査法である.皮膚温を定量的かつ非侵襲的に描出することができるため,乳癌の診断法として医療に応用されてきた.現在では空港などで,SARSやインフルエンザといった発熱性疾患患者のスクリーニングにも活用されている.整形外科疾患についても手腕振動症候群をはじめさまざまな疾患で,診断や治療効果判定などに応用する試みがなされてきた.

 室温が25℃前後で一定の外的環境下では,皮膚温は自律神経系で調節される皮膚血流量によって決定される.したがってサーモグラフィーは,間接的な自律神経機能検査ともいえる.

【適応】

 手腕振動症候群・Raynaud現象・複合性局所疼痛症候群など循環障害を生じうる疾患,関節リウマチなどの炎症性疾患,椎間板ヘルニアや神経根症などの脊椎疾患が適応となる.


実施手順

【1】安静時サーモグラフィー

 検査室の環境を整える必要がある.室温は22~28℃程度とし,室内は無風状態にする.室温に順応するために20分以上時間をかける.被検者に対する注意として,冷湿布や温湿布は検査日には使用しないよう伝えておく.

 検査部が露出するよう脱衣した状態で室温に順応する必要があるが,羞恥心から自律神経系の影響を受ける可能性があるため注意を要する.

 撮影は立位または座位で行う.目的に応じて上半身,下半身,四肢の前面,後面,側面から撮影する.手指を撮影する際には,手を広げ各指が独立して撮影されるよう留意する.

【2】負荷刺激サーモグラフィー

 皮膚温測定前に種々の負荷を加える場合がある.負荷としては冷水,温水,振動,神経ブロックなどが挙げられる.Raynaud現象の評価には冷水負荷を行い,その後の皮膚温回復を経時的に計測する(図1-7).


注意事項

 サーモグラフィーは非侵襲的であることから,反復検査を行うことが可能である

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