診療支援
治療

自己血輸血
Autologous blood transfusion
小久保 安朗
(福井大学医学部附属病院 准教授(手術部))

【概要】

 自己血輸血は,院内での実施管理体制が適正に確立している場合には,出血時の回収式自己血輸血,まれな血液型の患者の待機的な外科手術の貯血式自己血輸血など臨床状況に応じて自己血輸血を行うことを考慮する,とされている.〔厚生労働省:輸血療法の実施に関する指針(2020年3月一部改正)〕.自己血輸血には,①貯血式自己血輸血,②希釈式自己血輸血,③回収式自己血輸血がある.


1.貯血式自己血輸血

【適応】

 全身状態が良好な待期手術患者で,術中出血量が600mL以上で輸血が必要となる可能性がある患者,あるいはまれな血液型,赤血球不規則抗体陽性患者に適応がある.年齢制限はないが,原則としてHb値が11.0mg/dL未満の患者では採血を行わない.また,収縮期血圧180mmHg以上,拡張期血圧100mmHg以上の高血圧,あるいは収縮期血圧80mmHg以下の低血圧患者では慎重に採血する.

【種類】

 ①全血冷蔵保存:自己血を全血としてそのまま4~6℃で冷蔵保存する.

 ②MAP加赤血球と新鮮凍結血漿(FFP)保存:自己血を赤血球と血漿に分離した後,赤血球にMAP液を加え冷蔵保存,血漿はFFPとして冷凍保存する.

 ③冷凍赤血球とFFP保存:自己血を赤血球と血漿に分離した後,それぞれを冷凍保存し,手術当日に解凍して使用する.

【禁忌】

 菌血症のおそれのある細菌感染患者,不安定狭心症患者,中等度以上の大動脈弁狭窄症患者,NYHA心機能分類Ⅳ度の患者は禁忌である.


実施手順

 事前準備としてエポエチンアルファを,貯血開始前のHb濃度が13g/dL未満の患者には初回採血1週間前から,Hb濃度が13~14g/dLの患者には初回採血後から,最終採血まで採血のタイミングで週1回24,000IUを皮下投与する.鉄剤は原則として経口投与とし,100~200mg/日を初回採血1週間前から開始し,最終採血翌日まで投与する.

 医

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