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整形外科手術に対する麻酔法の選択
Anesthesia for orthopaedics surgery
讃岐 美智義
(呉医療センター・中国がんセンター 部長(中央手術部)〔広島県呉市〕)

 整形外科手術では,いずれの部位の手術も全身麻酔単独で行うことが可能であるが,全身麻酔に神経ブロックを組み合わせた麻酔を行うことが通例である.最近では,肺血栓塞栓症予防のために術後に抗凝固療法が行われるという理由で,硬膜外麻酔を避ける場合がある.以下,脊椎,上肢,下肢に分けて(表1-3),麻酔法の選択について述べる.


1.脊椎・脊髄手術

 ほとんどの手術は全身麻酔で行うことが多い.術中に運動誘発電位(motor evoked potential;MEP)や体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential;SEP)測定を行う場合には,セボフルランやデスフルランなどの揮発性麻酔薬の使用により脊髄レベルでの神経のシグナル伝達を抑制する可能性が強いため,使用は避け,プロポフォール,レミフェンタニルを用いた全静脈麻酔(total intravenous anesthesia;TIVA)で行う.MEP測定時は筋弛緩薬の投与をしないか,筋弛緩モニター下で筋弛緩薬の投与量を制限し,必要に応じてスガマデクスでの筋弛緩薬の拮抗も念頭におく.頚椎の可動域制限が起きやすい頚椎後縦靱帯骨化症や関節リウマチなどでは,頚椎の前後屈が危険あるいは気道確保が難しいことから,意識下挿管が行われることが多い.その際には,十分に患者に説明し同意を得る必要がある.胸椎レベルの手術で開胸になる場合には,分離肺換気用の気管チューブが必要になることがある.


2.上肢・肩手術

 全身麻酔単独で行うことも多い.肩の手術では,術後痛が強い場合には,斜角筋間アプローチによる腕神経叢ブロック持続注入の併用や,経静脈患者管理鎮痛法(intravenous patient-controlled analgesia;IV-PCA)を用いることがある.斜角筋間アプローチでは,片側の横隔神経麻痺に注意する.肩

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