【概説】
牽引による脊柱疾患の治療の歴史は非常に古く,古代ギリシャ時代にヒポクラテスが脊椎の骨折や脱臼の整復に用いたとの記録がある.直達牽引では,頭蓋骨にピンを刺入するため侵襲性は高いが,直接的に脊柱に牽引力が加わるため,頚椎の脱臼もしくは脱臼骨折の整復に有効である.そして,ハローベスト(halo vest)はその整復を維持し治癒させる保存療法として使用されてきた.
1.頭蓋水平牽引
【適応】
頚椎骨折や脱臼(環軸椎回旋位固定なども含む)の整復と整復位の維持,そして,これらの外傷の保存療法として使用される場合もある.その他,一時的な利用として,頚椎手術中の頭位固定,脊柱変形手術例の術中牽引などがある.術中の整復操作や矯正が必要な頚椎手術では,頭蓋水平牽引によるflexibleな固定が有効な場合がある.脊柱変形手術時では,牽引により脊椎インプラントに加わるストレスを軽減しながら矯正操作が可能にな