【概説】
1959年,渡辺正毅氏が渡辺式21号関節鏡を開発し,世界で初めて実用化に成功したことは,関節外科の新たな扉を開く革命的な出来事であった.当初は,膝の診断的関節鏡として使用されていたが,その後,主に断裂半月板を関節切開することなく切除,取り出すことに努力が払われ,1970年代後半から膝疾患全般に対する関節鏡視下手術として普及していった.さらに,膝関節のみならず,上肢では肩関節,肘関節,手関節へと,下肢では股関節,足関節へと各関節へ診断・手術の適応が拡大していき,現在では脊椎外科でも鏡視下手術がなされるようになっている.
1.関節鏡の種類と特性
関節鏡は内視鏡のなかで硬性鏡の範疇に入り,太さ(直径)は膝関節では直径4mm,外套管を付けると径5mmのものが一般的である.一時,肩関節,足関節,肘関節では直径2~3mmの細いものを使用していたが,現在では足関節,手関節を除いて膝関節と共通の太さのものが使用されている.
関節鏡には視向角と視野角がある.視向角は関節鏡(硬性鏡)の中心線と視野の中心の角度をいい,視向角により直視鏡と斜視鏡に分かれる.0°の直視鏡と,30°,45°,70°などの斜視鏡がある(図1-12a図).直視鏡は術野の立体感を把握しやすい一方,斜視鏡では関節鏡を回転することにより視野を広くとることができ,一般的には30°斜視鏡が使用されている.
関節鏡に限らず,内視鏡にはdistortion(歪み)が多少ともあること,また鏡視時の遠近の差が大きいことから,対象物の大きさの評価にも注意をしなくてはならない.
2.関節鏡視および鏡視下手術の実際
関節鏡視下手術を成功させるためには,対象とする関節における安全な穿刺点をつくる必要があり,その部位の解剖を熟知して関節鏡を挿入しなくてはならない.関節鏡視下手術の適応症例,鏡視方法,手術機器は各関節によって異なるので,膝関節を