診療支援
治療

骨延長[術]
Bone elongation, Bone lengthening
櫻吉 啓介
(金沢こども医療福祉センター センター長〔石川県金沢市〕)

【概要】

 骨延長術は100年以上の歴史があるが,現在主に行われているのは創外固定器を用いて骨切りを行い,骨切り部を徐々に牽引する方法である.この方法は,1950年代にロシアのIlizarovが,創外固定器で延長した部位に仮骨が形成されているのを偶然発見し,独自のリング型創外固定器を使用して実用化したものである.Ilizarov法は長い間国外に知られることはなかったが,イタリア人の難治性骨髄炎を治癒させたことで西側諸国に広まった.徐々に組織を牽引して新生されるのは骨,筋肉,腱,血管,皮膚などのあらゆる組織で,distraction histogenesisとよばれる再生医療である.

【適応】

 四肢の短縮や変形を有するあらゆる疾患が対象となる.軟骨無形成症などによる低身長では,座位の際に足底が床に接地できないと座位作業が不安定になるので,主に下腿の延長が行われる.上肢の短縮により排泄動作が困難な場合には,上腕骨延長が行われる.対象となる疾患は多岐にわたるが,注意を要するのは,①延長骨に隣接する関節に不安定性や関節軟骨障害,②骨脆弱性,③延長部の軟部組織に高度の循環障害や瘢痕,④麻痺による筋のアンバランス,⑤放射線照射の既往,⑥創外固定器を管理できないほどの精神疾患などを有する場合である.


1.延長器の種類

【1】単支柱型創外固定器

 遠位骨と近位骨にハーフピンを刺入し,1本の支柱で支える創外固定器である.単純な延長や,一期的矯正後の延長に使用される.リング型に比べ装着が簡便であるが,三次元的矯正が困難である.

【2】リング型創外固定器

 遠位骨と近位骨にハーフピンやワイヤーを刺入し,リング型の創外固定器に連結する.単支柱型に比べて装着は煩雑であるが,固定しなければならない骨片が小さくても比較的強固に固定でき,矯正角度の変更が行いやすい.リング型の中でもヘキサポッド型は,飛行機のフライトシミ

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