診療支援
治療

インフォームド・コンセント
Informed consent
大川 淳
(東京医科歯科大学大学院 教授)

 整形外科領域の治療手段の中心である手術だけでなく,脊髄造影などの侵襲的検査も含めて,文書によるインフォームド・コンセント(以下IC)を取得する時代になった.保存療法で文書による同意が取得されることはまだ一般的とはいえないが,治療を契約ととらえるとすれば,本来的にはICが必要なのかもしれない.本項では,整形外科領域におけるICの留意点について述べる.


1.ICの意義

 ICは,医療行為が本来患者の身体への侵襲を伴う傷害行為であるため,その違法性を阻却するために必要と考えられている.加えて,患者の自己決定権を個人の人格権の一部として認め,それを保障する仕組みでもある.つまり,医療は,医師が患者にとって最適であると考える医療行為を提供するというヒポクラテス時代の父権主義(パターナリズム)から,患者自身が情報を得て主体的に医療行為を選択する,という考え方に変わった.医療者としても,ICを仕方なく取得するというよりは,患者とのコミュニケーションの手段としてとらえるほうがよいだろう.

 しばしば医療の不確実性についての説明をICに含めることがある.発生しうる合併症を説明するだけでなく,合併症が起きることを前提にして,それを含めて疾患の治療である点を十分に説明し同意を得る.これはある意味で患者に対して不都合な結果が起こりうることを事前に通知することであり,仮にそれが起きた場合にはその結果を受け止める準備を求めることになる.言い換えると,ICは患者を医療のなかに巻き込む取り組みである.


2.ICの要件

 説明義務について一般的に求められる要件は次の通りである.

 ①現在の病状および今後の予測に関する情報.

 ②提供する医療行為の態様に関する情報.

 ③選択された医療行為の効果(利益)と危険性(リスク)に関する情報.

 特に②については,医療行為を選択するうえで必要な情報であり,医療行為の必要性,医療行為の

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