診療支援
治療

トピックス 整形外科における患者立脚型評価
加畑 多文
(金沢大学 准教授)

 疾患の重症度や機能障害の程度などといった患者の臨床的状況を,治療前後で評価することは重要である.これまでに数多くの臨床評価基準が各種整形外科疾患に対して考案され報告されているが,1980年代以前の評価基準は,ほとんどが医療者側からみた客観的な指標で構成されていた.しかしながら,疼痛に代表される主観的な指標は患者の感覚や感情に左右されるものであるため,医療者側からの測定や評価が必ずしも実際を反映しているとはいいがたい.また治療に対する患者の満足度は,患者の主観によって決まるものであるため,医療者目線の客観的な評価が患者の満足度と一致しないことは決して珍しくない.

 そこで近年では,医療者目線の客観的な指標に加え,患者目線の主観的な指標,すなわち患者立脚型の臨床評価基準でも病状や治療効果を評価する必要があると考えられるようになった.骨折治療を例に挙げると,治療が奏効したかどうかは,医療者目線では,骨折部の骨癒合率や骨癒合までの期間,合併症の有無,関節可動域,筋力などで評価されるが,患者目線では,痛みや違和感などの有無や外観の美醜,不都合の程度などで評価される.このような患者立脚型の臨床評価基準は,患者自身が記入し,患者のquality of life(QOL)などに関する質問項目を中心に構成されることが多く,健康関連QOL尺度ともよばれる.また,それぞれの疾患特有の症状に着目した疾患特異的尺度と,患者だけでなく広く一般の人々にも共通した項目で測定する包括的尺度とがある.

 患者立脚型の臨床評価基準の利点としては,医療者側が認識しにくい軽度の症状をとらえることができ網羅性があることであるが,一方で回答に不備がある可能性や,再現性が高くないこと,疾患に関連しない症状を回答に含めてしまう懸念があること,曖昧さが排除できず客観的評価には向いていないことなどが欠点といえる.医療者側からの客

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