診療支援
治療

外傷性軟部組織欠損
Traumatic soft tissue defect
前川 尚宜
(奈良県立医科大学 講師(救急医学講座))

【疾患概念】

 外傷性軟部組織欠損とは,外傷に伴う骨以外の皮膚,神経,血管,腱,靱帯,筋,筋膜などの軟部組織欠損の総称であり,四肢で生じることが多い.損傷の程度は外力の大きさ,剪断力の方向,持続時間などにより異なる.初療時に閉鎖創であったとしても広範囲に筋膜上剥脱(Morel-Lavallée lesion)を生じ,後日表皮壊死が生じ軟部組織欠損に至ることもある.軽微に見える損傷であっても,広範囲の筋膜上剥脱,筋体の損傷や血腫形成,組織の浮腫などによるコンパートメント症候群を呈することがあり,経時的に観察する必要がある.特に受傷後数日は適宜軟部組織の状態を評価し,コンパートメント症候群を疑う所見などには注意しておくことが重要である.


初期治療と診断のポイント

 特に高エネルギー外傷では,初療時はJATECTMに則り診療にあたるべきである.そのうえで,生命に影響を及ぼす外傷がないことが確認できれば,軟部組織損傷および末梢循環障害の有無,神経障害の評価を行う.単純X線撮影を行い骨折や脱臼だけでなく,異物の有無についても確認する.

 十分な麻酔を行い,創部を確認して異物を徹底的に除去したのちに,デブリドマンを進めていく.デブリドマンとは外傷創を外科手術創に近づけることであり,感染源になりうる壊死組織や高度に挫滅した組織の十分な切除を行う必要がある.デブリドマンは各層ごとに計画的に行い,それを終えてから創部の評価を行う.

 表皮に関しては,挫滅している部分などは切除を考える.筋層のデブリドマンでは,神経血管の損傷を避けるべく,駆血帯が使用可能なら駆血した状態でデブリドマンを行う.なお組織の血行を確認するために,適宜駆血を解除して組織の状態(色調や出血など)を確認する.筋体については挫滅した組織や,電気メスなどで刺激しても収縮のみられない筋体は切除する.挫滅した筋体のデブリドマンを徹底的に行う

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