診療支援
治療

圧挫症候群
Crush syndrome
當銘 保則
(琉球大学大学院 准教授)

【疾患概念】

 上肢,下肢,殿部などボリュームのある筋肉が長時間にわたって重量物などに圧迫され,救助によって圧迫が解除された際に急激な循環不全や代謝異常をきたす,局所的あるいは全身的な症候群である.そのため地震や戦争,労働災害,交通外傷といった特殊な状況下での報告がほとんどである.長時間の圧迫により虚血や骨格筋の細胞障害で生じた組織液・血液が,圧迫の解除により再潅流されるために生じる.急激に四肢の腫脹をきたすとともに,全身の循環障害・血圧低下が生じる.前腕や下腿では,極度の腫脹によってコンパートメント症候群を併発することがある.

【病態】

 圧迫部位の筋細胞の細胞膜が障害され,筋細胞内に大量に含有するクレアチンキナーゼ(CK),ミオグロビン,カリウム(K)が流出する.圧迫が解除されて損傷を受けた組織に流入した血液中の水分は,血管内皮障害のため急速に血管外へ漏出して,急激に四肢の腫脹をきたすとともに,全身的には循環血液量が低下した状態になり血圧が低下する.こうした循環障害や圧挫された組織から流出したミオグロビンなどの細胞成分は,近位尿細管細胞障害や尿細管閉塞を引き起こし,急性腎不全や著明な代謝性アシドーシスを引き起こす.治療介入が遅延すると,腎不全の進行や,高K血症による心室細動など致死性不整脈の発症から死に至ることもある.


問診で聞くべきこと

 圧迫時間を推定できる情報が大切である.4~6時間に及ぶ長時間の圧迫があれば,本症の発生を強く考慮する.1時間以内の圧迫での発症も報告されているため,圧迫の程度(重量)や受傷状態も考慮する.また,薬物によっては横紋筋融解を生じるものもあるため,可能であれば内服歴のチェックも重要である.


診断のポイント・必要な検査とその所見

 救出直後は,バイタルサインも安定し,頭部外傷を合併していない限り,意識も清明で重篤感に欠ける.受傷状況から本症を疑うことが重

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