診療支援
治療

骨折の髄内釘固定
Intramedullary nail fixation of fractures
島村 安則
(岡山大学大学院 准教授(運動器スポーツ医学講座))

【概説】

 髄内にインプラント(釘)を挿入し骨折部の安定性を得ることで骨癒合をはかる手法である.したがって長管骨(主に大腿骨,脛骨,上腕骨)の骨幹部骨折に多く適用されてきたが,近年インプラントの改良などにより骨幹端部の骨折にも応用され,良好な治療成績が報告されている.また広義の髄内固定法として,鎖骨や橈骨,尺骨,中手骨,中足骨の骨幹部骨折に対する髄内スクリュー・ピンによる固定法もある.

【歴史】

 象牙を髄内釘として使用し始めて以来(1800年代),さまざまな工夫・改良が加えられてきた.特にドイツのGerhard Küntscher(1900~1972)によるリーミングや閉鎖性髄内固定の開発により,広く髄内固定法が用いられるようになった.現在では遠位横止めスクリューにロッキング機構を備えたシステムもあり,より強固な初期固定性が得られるようになっている.

【利点・欠点】

 髄内釘固定では骨折部を展開せずに(閉鎖的に)手術を行うことを基本とする.そのため,骨折部周囲の軟部組織に対する侵襲を最小限にすることが可能で,骨癒合率もよい.したがって症例によっては高度粉砕している中間骨片の整復にこだわることなく,近位・遠位骨片同士のアライメントのみ整えて固定することが可能である.また長管骨を髄内より固定するため,外側にプレート固定を行うより力学的に有利である.一方で,整復操作やインプラント挿入など閉鎖性に行うため,X線透視装置による術者被曝量が高くなることがデメリットである.

【適応・非適応】

 先述のごとく大腿骨,脛骨,上腕骨の骨幹部骨折に対して行われており,これらが最もよい適応である(図2-3図2-4).近年,釘の断端から比較的短い距離に挿入可能な横止めスクリューの本数が増し,ロッキング機構などによりその固定性も向上したため,骨幹端部骨折に対する髄内釘も汎用される.

 一方で,明らかに髄腔が狭

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