【疾患概念】
打撲,挫傷,捻挫ともに皮膚に創はなく,皮下における損傷である.
①打撲:他の物体と体の一部が強く当たった結果,皮下の軟部組織において出血,筋膜損傷,筋断裂などを起こす.鈍的外傷による場合がほとんどである.皮下の出血による皮下血腫,腫脹,うっ血などを伴うことがある.下腿,大腿の打撲で重度の場合,コンパートメント症候群を起こす場合がある.
②挫傷:打撲と同様に皮下の損傷である.主に筋断裂や皮下出血を伴った場合で打撲より状態的には重症度が増した疾患名であり,下腿,大腿部で多くみられる.打撲と同様に使用されることが多いが,打撲は原因を重視した疾患名であり,挫傷は人体からみた変化を疾患名として表現したものともとれる.なお,筋挫傷(筋断裂など)においては急激に筋肉が引き延ばされた状態でも発生する.
③捻挫:関節に無理な力が働いて,捻ったりすると正常な可動域を超えて関節が曲がってしまう状態である.その結果として関節包の破綻,関節可動域を制限する靱帯損傷,関節周囲の軟部組織損傷などがみられる.完全に関節が破綻してしまうと脱臼状態となるが,そこまででなければ単純X線上は正常な関節としてとらえられる.また,外傷により一度亜脱臼状態を起こしてから正常に戻ったものも捻挫として表現される.
【好発部位】
一般に転倒に伴うものが多く,上肢より下肢に多くみられる.
①打撲,挫傷:上肢では前腕部,上腕部にみられ,下肢では大腿部,下腿部に多くみられる.走行中の転倒に伴う下腿筋挫傷,大腿下部挫傷などが多い.マラソンにおいては大腿部挫傷によりコンパートメント症候群に至ることもある.
②捻挫:ジャンプしたあとの着地時や転倒に伴う場合が多く,下肢にとりわけ多くみられる.そのなかでも足関節,膝関節が多い.上肢においては転倒の際に手をつくため手関節,球技などでは指関節が多い.時に肘関節にもみられる.一般に捻