【疾患概念】
幼児の骨折には,柔軟性のある骨が小さな外力によって不全骨折を起こす場合と,成人同様に大きな外力によって完全骨折を起こす場合とがある.長管骨においては成長軟骨板が存在し,この部位は骨端線損傷とよばれる骨折が起こりやすく,治療後には骨端線早期閉鎖などの成長障害が発生しうる.骨癒合後の自家矯正や過成長が旺盛であることも幼児の骨折の特徴である.
【病型・分類】
(1)小児の不全骨折
小児においては成人と比して不全骨折が起こりやすいため,比較的診断が難しい.
①急性塑性変形:長管骨骨幹部に生じた骨折線を伴わない外傷性の変形で,骨幹部が全体に弯曲しているもの.橈骨頭脱臼を伴う尺骨の急性塑性変形が代表的である.
②隆起骨折:長管骨に長軸方向の力が加わり,竹の節のような環状の隆起を生じた骨折.
③若木骨折:若い木の枝が折れ曲がったような変形を生じた骨折で,片側の皮質骨は連続性を絶たれているが,その反対側の皮質骨は連続性を保っている.
(2)骨端線損傷の分類(Salter-Harris分類)
骨端線損傷(骨端骨折)においては,成長軟骨板に骨性架橋が生じたり,壊死したりすると,成長障害が生じて予後不良となる.
・Ⅰ型:骨端線が離開しているタイプ.予後良好の場合が多い.
・Ⅱ型:骨端線が離開しているが,骨折線の一部が骨幹端を通過するタイプ.一般に予後良好とされるが,大腿骨遠位部,脛骨・上腕骨近位部においては予後不良例が少なくない.
・Ⅲ型:骨端線が離開しているが,骨折線の一部が骨端部を通過するタイプ.脛骨遠位部のTillaux骨折が代表的で,整復が不十分な場合は予後不良となる.
・Ⅳ型:骨折線が骨幹端から骨端線を通過して骨端部に至るタイプ.整復が不十分な場合は予後不良となる.
・Ⅴ型:成長軟骨板が圧挫して不可逆的損傷を受け,のちに骨端線早期閉鎖が起こるタイプ.高所転落などの高エネルギー外傷後に多く