診療支援
治療

高齢者の骨折の特殊性
Specificity of geriatric fracture
白濵 正博
(医療法人社団慶仁会川﨑病院 院長〔福岡県八女市〕)

【疾患概念】

 高齢者の骨折は骨粗鬆症などによる骨の脆弱性を基盤に,転倒などによる低エネルギー外傷や,交通事故などによる高エネルギー外傷によって生じる.低エネルギー外傷による脆弱性骨折は,機能予後を考慮して早期手術が要求され,高エネルギー外傷による骨折では,易出血性や予備能力低下から生命の危機に直面することもあり,慎重な全身管理が要求される.人口の高齢化に伴い,高齢者の骨折数は今後さらに増加すると思われる.大腿骨近位部骨折は2030年には年間30万人,脆弱性骨盤輪骨折は現在の2.4倍に増加すると予測されている.また,高齢者は既往症や合併症も多く,多剤服用していることも多いため,治療にあたり整形外科単科では対応困難で,老年内科医や看護師,薬剤師,理学療法士など,多職種連携による治療が必要となる.

【病態】

 高齢者の骨は易骨折性で,その原因には骨自体の脆弱性と転倒リスクなどの要因がある.

(1)骨脆弱性

 ①骨粗鬆症:加齢による骨構造の変化.骨皮質の厚さの減少(菲薄化),骨径の増大,ハバース管腔の拡大,海綿骨では骨梁の菲薄化,骨梁の連続性途絶,骨梁数の減少などがみられ,骨強度(骨密度と骨質)の低下が特徴である.骨粗鬆症患者は年々増加傾向で,現在約1,300万人と推定されている.

 ②病的骨折:悪性腫瘍の骨転移や骨髄腫などによる病的骨折のほか,糖尿病や腎不全(長期透析患者),関節リウマチ,ステロイド長期内服患者などで骨脆弱性をきたし,病的骨折を起こすことがある.

 ③非定型大腿骨骨折:骨粗鬆症治療薬(ビスホスホネート)の長期服用,抗がん剤としての高濃度抗RANKL抗体服用の合併症として,大腿骨転子下骨折を,また,加齢に伴う大腿骨の外側弯曲変形によるストレス骨折として,大腿骨骨幹部骨折をきたすことがある.

(2)転倒リスク

 ①内的因子:加齢による身体機能,特に下肢筋力低下や平衡感覚低下による歩行

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