診療支援
治療

遷延治癒骨折,偽関節
Delayed union and Nonunion (Pseudoarthrosis)
塩田 直史
(岡山医療センター 医長(整形外科・リハビリテーション科)〔岡山市北区〕)

【疾患概念】

 骨折の治癒過程が遅れ,患者の年齢と骨折型から予測される時期までに骨折が癒合していないものを遷延治癒骨折という.そして骨折が存在するにもかかわらず,骨折治癒過程が停止した状態を偽関節という.その原因として,感染を伴うものと伴わないものがある.本項では感染を伴わない遷延治癒骨折と偽関節について述べる.

【病型・分類】

 ①遷延癒合:予想した時期に骨癒合が進行していない状態であり,インプラントの弛みや間隙の拡大はまだ生じていないことが多い.この時期を見逃さず,別の手段を講じることで偽関節への移行を防ぐことができる.

 ②肥厚性偽関節:力学的安定性の欠如により骨折部に仮骨を生じているが,架橋仮骨が認められない状況.単純X線写真上で象足型や馬蹄型とよばれる.力学的安定性の追加によって骨癒合は進行する.

 ③阻血性偽関節:外傷や骨折に伴う骨折部近辺の血流低下により発生する.単純X線写真上では骨吸収により骨欠損が生じていることもあり,診断が遅れると廃用性骨減少を生じる.

 ④萎縮性偽関節:骨折断端は力の伝達がないため不安定となることで極端な骨吸収が起こり,仮骨形成が認められないことが特徴である.

【臨床症状または病態】

 原因として,血行障害・力学的不安定性・神経障害・その他が挙げられる.

 骨折時には血行障害が発生しているが,手術治療によってさらなる損傷が発生して血行障害が悪化し,局所阻血により骨癒合が遷延することがある.力学的不安定性は固定方法の選択ミスや整復不良に起因して発生し,インプラントが挿入されていれば弛みが生じる.また糖尿病や麻痺を伴う四肢の骨折や,患者自身の問題によって適切な荷重コントロールができない場合は,骨癒合が阻害される.近年では,喫煙や生活習慣上の問題も指摘されている.


問診で聞くべきこと

 荷重時や運動時の疼痛について問診する.遷延癒合や偽関節の場合,何らかの痛みの症

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