診療支援
治療

骨折に対する低出力超音波パルス療法
Low-intensity pulsed ultrasound on fracture repair
砂川 融
(広島大学大学院 教授(上肢機能解析制御科学))

【概説】

 低出力超音波パルス療法(low-intensity pulsed ultrasound;LIPUS)とは,超音波骨折治療法ともよばれ,超音波検査で使用される程度の低出力の超音波をパルス状に骨折部に断続的(1日20分,連日)に照射することで骨癒合を促進し,骨癒合期間を短縮しようとするものである.本治療法の開始当初はその有効性を支持する報告が多かったが,近年はX線上の骨癒合は促進するが臨床的な改善に結びついていないといった否定的な報告も散見される.その効果機序についてはなお不明な点が多いが,局所での細胞分化機序に影響を与えているようである.

【適応】

 2006(平成18)年に先進医療として認可され,2008(平成20)年には「四肢の開放骨折または粉砕骨折に対して手術を実施した後で受傷から3週間以内に開始」という制限つきながら保険収載され,2016(平成28)年には骨折型の制限が解除となり骨折手術後であれば本治療法を行うことは保険適応となった.その他,骨折治療後に遷延治癒,あるいは偽関節となった症例に対しては,難治性骨折超音波治療法として保険適応となっている(表2-4).いずれにしても骨癒合の遷延が予測,あるいはすでに遷延している場合に本治療法を行うことは,これまで侵襲的な追加手術しか治療法のなかった分野に新たな展開をもたらし,治療期間の延長に伴う患者QOLあるいは社会的損失を最小限にとどめることが期待されている.

 保険適応についての状況は以上の通りであるが,本治療法はあくまで補助療法であり,骨折治療の原則である,正確な整復と強固な固定が重要であり,安易に本治療法に頼るのは慎むべきである.実際に適応となるのは高度な粉砕骨折や骨欠損を伴った開放骨折,元来骨癒合に時間のかかる舟状骨骨折,脛骨に代表される骨幹部骨折,患者の全身状態が追加手術には不適当といった場合であろう.ロッ

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