【概説】
外傷患者の四肢切断の適応は,虚血時間が長く皮膚・筋肉の壊死が明らかな症例や,広範な軟部組織の挫滅・汚染を伴うなど適応が明らかな症例を除き,局所および全身状態を考慮して決定する.しかし,現場で治療を行う医師の経験や技量が異なるため,担当医の主観や医療機関の設備などに左右され,切断決定の判断に普遍性が得られていない.そのため,客観的な指標に基づき切断か温存かを決定する試みがなされてきた.本項では,現在までに提唱されてきた指標を示し,それらの評価について紹介する.
【適応】
急性期に切断を考慮しなければならない四肢外傷は,圧挫症候群,熱傷,凍傷などの特殊な状況を除いて,多くは主要動脈損傷を合併した場合である.動脈損傷は鋭的損傷と鈍的損傷に分けられる.切断か温存かの判断は,鋭的血管損傷では側副血行路,虚血時間,神経損傷の程度が,鈍的血管損傷ではそれに加えて軟部組織の挫滅の程度や骨折の形態が