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治療

外傷肢切断の適応基準
The criteria for immediate amputation of traumatized extremities
黒住 健人
(帝京大学医学部附属病院外傷センター)

【概説】

 外傷患者の四肢切断の適応は,虚血時間が長く皮膚・筋肉の壊死が明らかな症例や,広範な軟部組織の挫滅・汚染を伴うなど適応が明らかな症例を除き,局所および全身状態を考慮して決定する.しかし,現場で治療を行う医師の経験や技量が異なるため,担当医の主観や医療機関の設備などに左右され,切断決定の判断に普遍性が得られていない.そのため,客観的な指標に基づき切断か温存かを決定する試みがなされてきた.本項では,現在までに提唱されてきた指標を示し,それらの評価について紹介する.

【適応】

 急性期に切断を考慮しなければならない四肢外傷は,圧挫症候群,熱傷,凍傷などの特殊な状況を除いて,多くは主要動脈損傷を合併した場合である.動脈損傷は鋭的損傷と鈍的損傷に分けられる.切断か温存かの判断は,鋭的血管損傷では側副血行路,虚血時間,神経損傷の程度が,鈍的血管損傷ではそれに加えて軟部組織の挫滅の程度や骨折の形態が重要となる.さらに,鈍的血管損傷は開放創の有無により非開放性と開放性に分けられ,非開放性損傷では初期に明らかな虚血症状を呈さず見逃されやすいことに注意が必要である.このため,主要動脈損傷を合併しやすい骨折・脱臼の部位についてあらかじめ知っておくこと,そしてhard sign,soft signの有無について注意深く身体所見を得ることが重要である.

 適応決定のための局所因子は上述のごとく,鋭的または鈍的損傷かなどの損傷メカニズム,血管損傷レベル,虚血時間,神経および軟部組織損傷の程度,骨折形態,汚染の程度,損傷肢の多重損傷の有無,上肢であるか下肢であるかなどがある.一方,全身因子としては年齢,合併損傷の重症度,基礎疾患の内容,宗教・文化的背景,患者の希望などが考えられる.

【提唱されてきた指標】

 現在までに提唱されてきた指標としては,mangled extremity syndrome ind

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