【概説】
整形外科的メディカルチェックの目的は,安全にスポーツを実施するための潜在的な危険因子の除外と,スポーツ活動の継続過程で発生した,あるいは発生することの多い障害や外傷の前段階の有無について評価を行い,早期治療や予防方法ついて適切なアドバイスを行うことにある.アスリートにおいては,必要に応じてパフォーマンスへの影響を含めた議論を交わす場合もある.本来,メディカルチェックはアスリートのみならず,スポーツ活動を行う者すべてを対象に実施することが望ましく,適切な評価とフィードバックを行うことで,スポーツ外傷や障害の発生や,症状の悪化を未然に防ぐことが期待される.
1.実施上のポイント
メディカルチェックは対象者がスポーツ活動を継続して行うことを前提に実施し,初回には対象者のプロフィールとして,不変な項目を基本項目として評価する.初回以降は,スポーツ活動の継続によって変化する項目を重点的に継続的評価項目として設定することになるが,成長に伴う変化が多い若年者では,継続的評価項目が多くなるといえる(表3-1図).
また,実施するスポーツの種類,すなわち競技や種目の特性に応じて評価項目を設定することも重要である.
2.基本項目
基本項目は内科的な項目(既往歴,家族歴,アレルギーの有無など)に加えて,年代別のスポーツ歴と専門的スポーツの開始年齢(時期)を記録し,整形外科的な既往歴についても別途詳細に記録しておいたほうがよい.
3.継続的評価項目
成人の場合,主要な関節のアライメントや関節弛緩性については,経時的な変化が少ないので基本項目として設定してもよいと思われるが,小児や若年アスリートの場合,成長に伴ってアライメントや関節弛緩性(可動域)も変化する場合があるので,少なくとも年に1回程度は評価することが望ましい.
関節のアライメントチェックは6項目(①肘関節外反角度;carrying a