診療支援
治療

スポーツ外傷・障害に対する現場での応急処置
Emergency measures of sports injuries in the field
中嶋 耕平
(国立スポーツ科学センタースポーツメディカルセンター 副主任研究員〔東京都北区〕)

【概説】

 スポーツ活動の実施に際しては,起こりうる外傷や障害に対して,事前のメディカルチェックの実施などによって,最大限の予防に努める必要があるが,それでもスポーツ活動の現場では,ある程度の数の外傷や障害が発生しているのが実情である.国際オリンピック委員会(IOC)の医事委員会による,夏季オリンピック競技の外傷・疾病調査では,競技期間中の外傷発生率は8~10%程度ともいわれている.

 スポーツが広く人々に普及していくためには,①スポーツが身体の健康にもたらす陽性効果の実証と,②安全に実施可能な環境の確立,さらには③万が一,外傷や障害が発生しても適切な処置と治療によって,スポーツからの離脱を最小限にとどめ,再開意欲を損なわないための配慮が重要といえる.スポーツによる外傷や障害を契機に,治癒後も永遠にスポーツから離れてしまうという事態は避けなければならない.そのためには,外傷や障害発生時には,受傷者の不安や苦痛を最小限に抑え,すみやかかつ円滑に対処することが求められる.

 また,発生した事例に対しては有用性の高い疫学的な検討を実施し,持続的な再発予防への取り組みを行うことがきわめて重要となる.


1.実施上のポイント

 スポーツ外傷・障害の治療に関しては,いわゆる一般の整形外科治療の枠組みと大きな差はないが,発生現場での対応は,その後に行われる治療とその期間を効率的に短縮し,早期にもとの活動レベルに回復させることを念頭において実行する必要がある.

 スポーツ外傷や障害には競技や種目による特性もあるため,スポーツ現場に立ち会う場合には,あらかじめ競技特性に応じた応急処置の準備をしておくことが望ましい.また,主要な競技では,国内もしくは国際競技団体が医事規定を設けていることが多く,事前にその内容をチェックしておくことで,準備すべき医薬品や衛生材料,医療機器を把握することも可能である.さらに競技

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