診療支援
治療

スポーツによる肩関節部の外傷・障害
Shoulder problems associated with sports
今井 晋二
(滋賀医科大学 教授)

【疾患概念】

 日常生活で必要とされるレベル以上のハイパフォーマンスが要求されるスポーツでは,肩関節は多大な物理的・生物学的ストレスにさらされる.野球やテニスなどのオーバーヘッド動作では,高度の力学的出力が要求され,サッカーやバスケットボールでは,下肢・体幹のパフォーマンスを支える高度のバランス機能が要求される.肩・肩甲帯の機能を全く必要としないスポーツは皆無と言っても過言ではない.特にラグビー,アメリカンフットボールに代表されるいわゆるコリジョンスポーツでは,肩の動きとしてのハイパフォーマンスが要求される以外に,激しい衝突にさらされつつ,相手を撃破する機能が要求される.

 オーバーヘッド動作で過度の反復ストレスが加わると,上方関節唇損傷,関節包側腱板部分断裂やBennett損傷が,またスライディング時にバランスを崩すと肩関節脱臼,肩鎖関節脱臼や上腕骨近位部骨折が,また激しいタックルから上腕を過外転・外旋され反復性肩関節脱臼が引き起こされる.現役のスポーツ選手に起こるこれらの肩関節部の障害以外に,青年期のオーバーヘッド動作の反復が中年期になってから関節包側腱板部分断裂として遺残し,症状が出ることも多くある.

【病態】

(1)上方関節唇損傷

 転倒で上肢をついて,上腕骨頭が上方にせり上がるときに,一気に関節唇を関節窩から上方に剥がすように受傷する外傷と,オーバーヘッド動作で繰り返し上腕骨頭が上方にせり上がり,上方関節唇を関節窩から剥がすオーバーユースに起因する障害がある.

(2)関節包側腱板部分断裂

 上方関節唇損傷と同じく,オーバーヘッド動作で繰り返し上腕骨頭が上方にせり上がり,関節内から腱板を突き上げると,腱板を関節内から損傷する原因となる.別名インターナルインピンジメント症候群という.

(3)Bennett損傷

 投球に伴う肩甲骨関節窩下方の骨棘で,以前は三頭筋付着部の骨棘とされていたが

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