診療支援
治療

スポーツによる肘関節の外傷・障害
Elbow injuries in sports
瓜田 淳
(獨協医科大学 講師)

【疾患概念】

 スポーツ種目に特有の外力が肘関節にかかり生じる傷害である.コンタクトスポーツなどにより肘関節に直逹外力がかかり生じる骨折や靱帯損傷などの外傷と,競技種目に特有の動作による繰り返しのストレスで生じる慢性障害に大別される.前者はスポーツ競技による特異性はなく,一般外傷に準じた治療が行われる.慢性障害については,肘関節周辺の骨端線は成長期に閉じるため,成長期のスポーツによる傷害は遺残すると成人期に変形性関節症に進行していく可能性もあり,予防,早期診断および的確な治療が重要である.

【病態】

 競技種目としては,外傷を除くと野球やテニスなどのオーバーヘッドスローのスポーツに多いが,なかでも競技人口の多さから野球が最も多い.投球・投擲競技においては,投球動作により肘にかかる外反ストレスや伸展ストレスの繰り返しにより傷害が生じる.これらは野球肘と総称される.成人期の傷害は靱帯や変形性関節症であるのに対し,成長期の傷害は成長軟骨に生じる骨端症,骨端線離開や離断性骨軟骨炎(OCD)といった特有の病態となる.

 また,テニスのようなラケットスポーツでは,繰り返しのスイングにより前腕筋群の起始部である外側上顆(伸筋群)や内側上顆(屈筋群)に炎症が生じる.

(1)野球肘

 投球動作では肘関節に外反力がかかるため,肘関節内側には牽引力,外側には圧迫と回旋による剪断力,後方には伸展ストレスがかかる(図3-6).投球動作中はこのストレスをコントロールすることは難しく,ストレスの部位によって異なる病態が生じる.また,成長期の野球肘では骨端線の閉鎖により病態が異なるため,肘関節の部位や成長の時期による病態の理解が重要である.

 ①離断性骨軟骨炎(OCD):繰り返す投球動作により,上腕骨小頭にはストレスがかかっている.このストレスにより骨端核の二次骨化の障害が生じて,上腕骨小頭OCDとなる(図3-7)

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