1.骨盤周囲の裂離骨折
【疾患概念と疫学】
成長期に骨盤および股関節の骨の先端の骨端部分が裂離骨折を起こし,時に解剖学的な位置から転位する病態である.股関節や骨盤の骨端線裂離骨折は,14~25歳で,まだ骨端線が閉鎖していない部位で発生することが多い.特に多い部位は坐骨結節(表3-5図),下前腸骨棘,上前腸骨棘,の3つである.
【病態】
裂離骨折は,その部分に付着している腱が牽引あるいは圧がかかることによって,骨端線が損傷を起こす病態である.骨盤および股関節周囲の骨端線裂離骨折は,それらの部位にそれぞれ付着している筋腱付着部が関連する(表3-6図).
問診で聞くべきこと
受傷機転,症状の部位,圧痛点や痛みの性質,既往歴などが診断に重要である.
必要な検査
①単純X線写真:正面X線写真,仰臥位と立位,false profile像,Lauenstein像,modified Dunn像など,見落としがないように多方向からの撮影を行う.
②CT検査:MPR撮影を行う.
③MRI:T2脂肪抑制もしくはSTIR像で,裂離骨折部は高信号を呈する.T1強調像では骨折部が低信号を呈する.
診断のポイント
身体所見と病歴聴取が基本となる.単純X線写真で診断が確定されることが一般的である.しかし,転位のない骨折や明らかな外傷がなく疲労骨折のように起こる場合は,診断が確実に行われない可能性がある.MRIは転位のない骨折に対して有用である.転位のある骨折の場合は,CTで転位の大きさなどを測定することが可能である(表3-7図).
治療方針
転位のない骨折あるいは5mm以内であれば保存療法を行う.転位が2cm以上であれば,手術で整復固定することが推奨される.下前腸骨棘は最近関節鏡視下に修復されることが報告されている.
保存療法
疼痛が強い場合は,疼痛範囲内で部分荷重から開始する.通常は外固定を行わない.約3か月経過し,