診療支援
治療

スポーツによる大腿・膝・下腿部の外傷・障害
Sports injuries of thigh, knee, and leg
黒田 良祐
(神戸大学大学院 教授)

【概説】

 大腿・膝・下腿部は,「走る」「跳ぶ」「蹴る」といったスポーツ活動で繰り返し外力が加わるため,さまざまな外傷・障害が発生する.障害は一定の動作を繰り返すことで慢性的に起こるもので,外傷は明らかな受傷機転がある“けが”をいう.

 障害の代表的疾患を各部位別に挙げる.大腿部では大腿骨疲労骨折,大転子部滑液包炎,膝関節では腸脛靱帯炎,分裂膝蓋骨,Osgood-Schlatter病,鵞足炎,離断性骨軟骨炎,さらには膝関節外傷に起因する二次性変形性膝関節症,下腿部では脛骨・腓骨の疲労骨折,シンスプリント,慢性下腿コンパートメント症候群などがある.一方,外傷は大腿・下腿部では筋挫傷,肉ばなれ,膝関節では靱帯損傷,半月板損傷,関節内骨折,関節軟骨損傷などがある.いずれも正確な診断のもとに適切な治療が行われないとスポーツ復帰が困難となり,競技スポーツでは選手生命を脅かす事態にもなる.本項では重複を避けるために,大腿・膝・下腿部のスポーツ外傷・障害に対する診断・治療の一般的なポイントについて述べる.


問診で聞くべきこと

 訴えの発症様式とその性状を正確に把握することが重要である.外傷例では受傷機転と受傷肢位,pop音の有無,受傷後の状況(スポーツ活動中であれば継続の可否)を聴取することで,損傷部位の予測が可能である.明らかな外傷歴がない慢性障害で疼痛を主訴とする場合には,疼痛の部位と疼痛を誘発する動作を明らかにすることにより,障害を推測できる場合が多い.また疼痛によるスポーツ活動や日常生活動作の障害の有無を把握することが重要である.スポーツ歴,現在のスポーツ種目,ポジションとともに,以前に受けた外傷・障害の治療歴と経過についての情報も大切である.


必要な検査とその所見

 骨病変が考えられる例では単純X線検査を行う.症状に応じて通常の2方向に加えて,特殊な方向や肢位での撮影が必要になる.膝では膝

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