診療支援
治療

スポーツによる足部・足関節の外傷・障害
Sports injuries of foot and ankle
熊井 司
(早稲田大学スポーツ科学学術院 教授)

【疾患概念】

 ヒトの「足」は特殊である.30cmにも満たない「足」は,不安定な上体を支えつつ,全体重を受けて運動するという大きな役割を担っている.当然のことながらスポーツにおいても,ランニング,ジャンプ,着地,切り返し動作などさまざまな運動を行う際に,「足」には床(地面)を相手に強大な力学的負荷がかかっている.そのため「足」には多種多様な外傷・障害が発生し,それらはスポーツにおけるパフォーマンスを著しく低下させる.スポーツによる足部・足関節の外傷・障害は,頻度も高く多岐にわたるため,診断や治療に難渋することも少なくない.ほとんどの運動パフォーマンスに影響を与えるため,満足いくスポーツ復帰にはしっかりと診断し治療することが要求される.


1.診断の進め方のポイント

 問診と診察を行った段階で,ある程度の疾患・病態を予測したうえで補助診断としての画像検査を選択的に行う.的確な画像検査を依頼するためには,鑑別診断を含めた病態予測がしっかりとできている必要がある.特に足を診るにあたって他の部位と異なる点は,①足固有の機能を理解し評価することと,②皮下組織が少なくほとんどの構造物が容易に触診できる点である.

 足は直接地面に接地する器官であるため,スポーツ外傷・障害の多くは地面との接地・荷重に関連したものである.そのため,座位やベッド上での非荷重での診察で判断するのではなく,実際に荷重させてみて疼痛部位を確認し,足部の変形やアライメントを評価することが必須である.さらに皮膚上からの触診で腱,靱帯,関節,骨隆起などほとんどの構造物を直接手で触れることができるため,どの部位にはどういった疾患が起こりうるのか,あらかじめ熟知しておくことで,単純X線検査など補助診断に頼らずともほとんどの疾患の予測が可能である.


2.問診で聞くべきこと

【1】年齢・性別

 年齢・性別により発生頻度が異なる疾患も多く,それら

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