【疾患概念】
化膿性関節炎は細菌性関節炎の1つであり,起炎菌が関節内に侵入し,増殖する疾患である.真菌性・結核性・淋菌性・ウイルス性関節炎とは起炎病原体,臨床症状・経過が異なり,区別して扱う必要がある.本疾患は乳幼児,高齢者,易感染性宿主に発症することが多い.診断・治療が遅れた場合には,急速な関節破壊を引き起こし,永続的な関節機能障害をきたす可能性があるため,診断・治療の緊急性が高い疾患である.
【病態】
感染経路として,①血行性感染,②周囲軟部組織や骨組織からの感染の波及,③関節内注射や手術操作,開放性の外傷に関連した直接感染,の3つが挙げられ,血行性感染の頻度が最も高い.関節内に侵入した菌体は滑膜に付着し,増殖する.菌体に対する急性炎症反応が起こり,菌が放出する蛋白質分解酵素と毒素によって関節軟骨が破壊される.滑液の循環障害や膿の貯留による関節内圧の上昇は,軟骨破壊を助長する.
問診で聞くべきこと
基礎疾患の有無,内服薬,関節内注射や手術,外傷の既往を確認する.糖尿病,副腎皮質ステロイド薬の服用,アルコール依存,悪性腫瘍,腎機能障害,肝機能障害,低栄養状態,human immunodeficiency virus(HIV)感染が,化膿性関節炎の罹患リスクを上昇させることが知られている.
必要な検査とその所見
①血液生化学検査:白血球数の増加,好中球分画の増加,赤血球沈降速度(ESR)の遅延,C反応性蛋白(CRP)高値を認める.
②関節液検査:関節穿刺を施行し,関節液検査(細胞数,細胞分画,結晶検査,グラム染色および細菌培養検査)を行う.化膿性関節炎では関節液は黄白色に混濁し,白血球数の増加(50,000/μL以上)を認めることが多い.
③血液培養検査:血行性感染もしくは化膿性関節炎から菌血症をきたしている場合には,起炎菌の同定に有用である.
④画像検査(図4-1図):単純X線
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