診療支援
治療

皮膚や骨欠損を伴う骨髄炎
Osteomyelitis with skin and bone defect
渡部 欣忍
(帝京大学 教授)

【疾患概念】

 骨折の治療中に,骨折部に細菌感染を生じた状態が骨髄炎である.起炎菌としては,黄色ブドウ球菌が多い.骨組織を外科的に切除(デブリドマン)するため,骨髄炎の治療では骨欠損を生じる.Gustilo typeⅢBおよびⅢCの開放骨折では,皮弁形成術などを要する皮膚軟部組織欠損を伴う.また,受傷時の軟部組織損傷の程度は軽くても,脛骨骨髄炎では治療中に皮膚欠損を生じ,皮弁形成術などを要することも多い.50mm以上の骨欠損は,通常の自家海綿骨移植術だけでは再建が困難であるので,induced membrane technique(Masquelet法)を用いた自家海綿骨移植術,血管柄付き骨移植術,骨移動術などによる再建を要する(「開放骨折後の骨髄炎」の項を参照).

【頻度】

 Gustilo typeⅢBおよびⅢC開放骨折後の骨髄炎発症率は,15~45%といわれている.


問診で聞くべきこと

 糖尿病,腎臓病,肝硬変,膠原病,ステロイド内服など,易感染性の原因となる併存症を問診する.骨髄炎発症後に紹介転院してきた患者を治療する場合は,受傷からの治療経過の詳細な情報を前医に求める.


診断のポイント

 ①起炎菌の同定と感染範囲の把握:培養検査で起炎菌を同定して,抗菌薬の感受性を検索する.培養検体は,できるだけ深層から採取する.瘻孔など表層からスワブで採取した検体は,菌が検出されても信頼性は著しく低い.骨折固定用インプラント周囲のバイオフィルムは,超音波装置などを用いてこれを分解(sonication)しないと,菌は同定できない.

 ②骨髄炎に対する画像検索:単純X線写真,CT画像,MRI,骨シンチグラフィー,白血球シンチグラフィー,PETなどがある.感度・特異度ともにPETが最も優秀であるが,保険適用はない.


専門病院へのコンサルテーション

 できるだけ早期に治療が可能な病院へ転院させて治療すべ

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?