診療支援
治療

内固定材料使用後の感染
Infection after osteosynthesis
三崎 智範
(福井県立病院 主任医長〔福井市〕)

【疾患概念】

 骨折に対する内固定術においては,主にプレート,髄内釘,スクリュー,鋼線といった金属製の内固定材料が使用される.これらは骨折部の固定や整復位の保持にはきわめて重要な役割を果たすが,生体にとっては異物であるため,適切な術後感染予防対策がなされたとしてもまれに術後感染を生じて治療に難渋することがある.特に開放性骨折の場合にはそのリスクが高くなるが,その詳細は他項に譲るとして,本項では閉鎖性骨折に対する内固定術後に生じた感染を念頭に述べる.

【頻度】

 閉鎖性骨折術後に生じる手術部位感染の頻度は,大腿骨近位部骨折,橈骨遠位端骨折をはじめいずれの部位においても1%以下とされているが,下肢の骨折においてその頻度が高いと報告されている.


診断のポイント

 全身的には37.5℃以上の持続する発熱,肉眼的には手術部位の発赤,腫脹,熱感を認め,手術部位に排膿や瘻孔を認める場合には診断が容易である.排膿がある場合には必ず細菌培養検査を行って起炎菌を同定するが,仮に培養結果が陰性であっても感染を否定してはならない.また,コンタミネーションの可能性を常に念頭におく必要があり,無菌的な検体採取や必要に応じて複数回の検査が必要である.

 血液生化学検査では白血球数やCRP値,赤血球沈降速度の上昇,核の左方移動を認めることが一般的であるが,弱毒菌感染や慢性感染例では必ずしも高値を示さないこともあり,注意が必要である.CRPのカットオフ値は急性感染で10mg/dL,遅発性感染で1mg/dLとされているが,術後早期にはCRPが高値であることもまれではないため,総合的な判断が必要となる.近年ではプロカルシトニンやプレセプシン,IL-6を診断の補助に用いることもある.

 画像検査では単純X線検査は必須であり,最低2方向で撮影する.骨癒合の有無,骨融解像や異常な骨膜反応はもちろん,内固定材料の弛みや折損の有無を確

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?