【はじめに】
近年の脊椎インストゥルメンテーション手術の発展により,高い骨癒合率の達成や早期の社会復帰が可能となり,脊椎インプラントを用いた手術件数は増加している.日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄手術調査報告(2013)によれば,全手術例31,380例中9,487例(30.2%)に脊椎インストゥルメンテーション手術が行われており,2001年の調査時と比較して症例数は倍増している.その一方で,術後深部感染の頻度は脊椎手術全体で1.1%,インプラント使用で2.0%,非使用で0.7%と,インストゥルメンテーション手術は明らかに感染率が高い.またいったん感染すると,金属表面に形成されるバイオフィルムが抗菌薬の効果を減弱させるため,治療に難渋する.そのため,在院日数の延長や,医療費の増大のみならず,患者のADLや満足度を著しく損ない,医療者側への多大な負担を強いるなど,多くの問題を有している.
診断のポイント
手術創から排膿を認めた場合は,その診断は容易であるが,深部感染の場合は必ずしも創哆開や手術創表面の発赤,熱感などの感染徴候が確認できないこともある.特に術後1週以降の発熱や局所の疼痛を訴えた場合は,血液データや各種画像診断と併せて総合的に判断を行う必要がある.また感染が表層か深部感染かによっても治療方針が異なるため,その見極めは重要となる.
術後感染の有無を確認する炎症性マーカーとして,白血球数,白血球分画(好中球,リンパ球など),赤血球沈降速度,C-reactive protein(CRP),プロカルシトニン(procalcitonin;PCT)などが用いられている.術後早期では手術侵襲に伴う炎症性マーカーの上昇が起こり,白血球数(好中球数)では術後1~2日目に,CRP値は術後2~3日目とやや遅れてピークを示したあとに,徐々に炎症性マーカーは低下する.したがって,その後に生じる炎症性
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