【概説】
骨・軟部腫瘍分類の国際標準はWHO分類(2020年改訂第5版)である.加えて国内では,日本整形外科学会骨・軟部腫瘍委員会による「悪性骨腫瘍取扱い規約」,「悪性軟部腫瘍取扱い規約」に則り検体は取り扱われる.腫瘍分類は,かつてはどんな組織に由来するかという視点で行われてきたが,近年はどのような分化を示すかという視点に変わってきた.また,特異的遺伝子変異が知られるようになり,遺伝子変異も腫瘍分類要素の1つとなっている.
骨・軟部悪性腫瘍のほとんどが希少がんと定義されるように,発生頻度が低いにもかかわらず種類が多く組織所見が多様であることから,その組織診断には高度の専門性が要求される.そのため,骨・軟部腫瘍を扱う病院には骨・軟部腫瘍を専門とする病理診断医が必要とされるが,骨・軟部腫瘍病理医は少なく,Jaffe's triangleを実践できている病院は限られている.そのような環境下で骨・軟部腫瘍や腫瘍類似疾患の正しい組織診断を得るためには,臨床医,放射線診断医,病理医間のコミュニケーションを密にする必要がある.加えて,形態診断方法の種類,それらの特徴や適した検体の提出方法などを知っておくことも大切である.
1.病理組織診断依頼に際して
【1】臨床情報
骨・軟部腫瘍の組織診断では,臨床所見や画像所見は重要である.病理組織診断を依頼する際には,これらの情報を効率よく的確に病理医に伝える必要がある.年齢・性・主訴・現病歴・既往歴・臨床診断は最低限必要である.なかでも既往歴は重要な情報であり,特に転移性腫瘍の鑑別診断時には欠かせない.がんの治療後10年以上を経て転移を生じることもまれではない.がんの転移巣の組織像はしばしば肉腫様となり,未分化多形肉腫と鑑別を要するなど,原発性腫瘍と転移性腫瘍の鑑別に苦慮することがある.その際,がんの治療歴の有無や画像所見が重要な判断材料となる.また,
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