診療支援
治療

骨・軟部腫瘍の遺伝子診断
Genetic diagnosis of bone and soft tissue tumors
野島 孝之
(金沢大学附属病院 客員教授)

【意義】

 骨・軟部腫瘍の組織診断の基本は,腫瘍細胞の分化形質,分化の方向を明らかにすることであり,免疫染色が汎用されている.近年,骨・軟部腫瘍の腫瘍型に特徴的な染色体や遺伝子異常が見出され,組織診断の補助として活用されている.がん遺伝子パネル検査の保険診療化に伴い,種々の腫瘍型で新たな遺伝子異常が今後急速に明らかにされるであろう.

【適応】

 骨・軟部腫瘍に特徴的な染色体転座とその結果としての転座型融合変異遺伝子は,30種以上の腫瘍型に見出されている.Ewing肉腫の11番染色体と22番染色体の相互転座は,11番染色体のFLI1遺伝子と22番染色体のEWSR1と名付けられたRNA結合蛋白質遺伝子との融合である.また,滑膜肉腫では18番染色体のSYT遺伝子とX染色体のSSX遺伝子が融合し,SYT-SSX融合遺伝子が形成される.高分化型および脱分化型脂肪肉腫,傍骨性骨肉腫や骨内高分化型骨肉腫では12番染色体長腕のMDM2およびCDK4遺伝子の増幅が検出される.特定の遺伝子の点突然変異として,線維性異形成症のGNAS遺伝子,内軟骨腫のIDH1IDH2遺伝子,骨巨細胞腫のH3F3A遺伝子,軟骨芽細胞腫のH3F3B遺伝子などが挙げられる.


試料・実施手順

 用途により新鮮な生材料やホルマリン固定パラフィン包埋ブロック(FFPE)の組織標本を用いる.染色体の核型解析には生材料を細胞培養する必要がある.染色体上の遺伝子の増幅や欠失,転座の解析にはFFPE組織標本からfluorescence in situ hybridization(FISH)法が用いられる.FISH法による転座型融合変異遺伝子の検出は,標的とする遺伝子の両側に異なる色調のプローブを使用し,組織像を確認しながら検索するので説得力がある.遺伝子の解析には腫瘍組織から抽出したDNAやRNAを用いる.新鮮凍結生材料は良質の核酸を効率

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