診療支援
治療

悪性骨・軟部腫瘍の切除縁
Surgical margin in the treatment of malignant bone and soft tissue tumor
森井 健司
(杏林大学 教授)

【概説】

 悪性腫瘍は良性腫瘍より局所浸潤能が高い.良性腫瘍の治療は腫瘍組織のみを切除することで完遂するが,悪性腫瘍の根治を得るには腫瘍周囲の正常な組織を腫瘍とともに一塊に切除する必要がある.切除縁とは,腫瘍の悪性度に基づいて決定され,腫瘍外縁からの距離によって表現される切除予定線のことであり,悪性腫瘍の手術計画における最も重要な概念である.顕微鏡的評価と肉眼的評価があるが,評価結果は悪性腫瘍の局所制御率や全生存率に影響する重要な予後因子である.

【切除法の種類】

 腫瘍外縁から切除縁までの距離により,以下のように分類される(図5-2).

(1)広範切除

 悪性腫瘍の標準的切除法である.腫瘍外縁から2~5cm程度距離をおいた部位までの正常組織,あるいは筋膜,関節包,腱鞘,血管外膜,神経上膜など腫瘍の浸潤を阻害すると考えられている組織を,腫瘍と一塊に切除しうる切除予定線を設定する.

(2)辺縁切除

 広範切除よりもより腫瘍近傍に切除予定線を設定する.腫瘍には直接切り込まないが周囲の出血巣,浮腫状組織など反応層を切除線が通過することを容認する.広範切除と比較して侵襲が少なく機能温存に有利である.根治性に劣るため悪性腫瘍には原則適応せず,良性腫瘍および高分化脂肪肉腫など良悪性の中間的な生物学的態度を示す中間群腫瘍に適応される.神経血管束など解剖学的に重要な構造物が隣接し広範切除が困難である悪性腫瘍に対して,放射線照射など補助療法を併用した辺縁切除を行うことがある.

(3)拡大掻爬

 Atypical cartilaginous tumorsや骨巨細胞腫など良悪性中間群に適応される.通常の掻爬術を行ったあとで熱処理,液体窒素,エタノールなど細胞殺傷効果をもつ手段を用いて残存腫瘍細胞を殺傷する.

(4)腫瘍内切除・掻爬

 切除線が腫瘍を通過する.悪性腫瘍には適応されない.


広範切除の実施手順

 病理組織学的

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