診療支援
治療

悪性末梢神経鞘腫瘍
Malignant peripheral nerve sheath tumor (MPNST)
淺沼 邦洋
(三重大学医学部附属病院 講師)

【疾患概念】

 MPNSTは,末梢神経から発生,あるいは神経鞘成分への分化を示す悪性腫瘍の総称である.軟部肉腫の約5%を占め,その発生原因として,約50%が神経線維腫症1型(neurofibromatosis 1;NF1)から発生し,逆にNF1の約10%がMPNSTを発症する.特に蔓状神経線維腫(plexiform neurofibroma)はMPNST発生のリスクが高い.約10%は放射線照射後に発生し,残りは散発性(sporadic)な発生である.発生部位は坐骨神経が最も多く,四肢,体幹,頭頚部,後腹膜の順に多い.20~50歳に好発し,特にNF1での発生は若い傾向があり,思春期でも発生しうるので注意を要する.神経鞘腫からの発生はきわめてまれである.


診断のポイント

 増大傾向を示す腫瘍に対しMRI,CTなどの画像検査を行い,神経との連続性が認められた場合はMPNSTの可能性を考慮するが,そのほかにMPNSTに特徴的な画像所見はない.NF1の場合,もともと大きな神経線維腫を有する場合があるが,急速な腫瘍の増大,疼痛の出現,神経症状の出現,硬さの変化を認めた場合は,MPNSTの発生を考慮する.FDG-PETは,NF1におけるMPNSTの鑑別に有効との報告もある.NF1によるMPNSTは診断がやや遅れがちであり,サイズがより大きくなる傾向があるため,患者本人にも上記に注意するように教育するのは重要である.ただし,悪性腫瘍の合併率は健常人と比較して約2.7倍高いともいわれ,発生部位によってはMPNST以外の可能性も頭の片隅にとどめておく.特に50歳以下の乳癌発生リスクの指摘が多く,定期的な検診を勧める.また,消化管間質腫瘍の合併も比較的多く,下血や腹痛などの消化器症状を認めた場合は,消化器科に精査を依頼する.そのほか,過去の放射線照射範囲からの発生の場合は,放射線照射後肉腫としての発生

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