【疾患概念】
胎生期の脊索が遺残し,脊索細胞が悪性化した腫瘍とされている.脊索細胞ががん化する原因はまだ解明されていない.悪性度は高くはないが,周囲に浸潤し切除術後にしばしば局所再発を繰り返す疾患である.
【頻度】
年間人口100万人あたり1人程度の発生率と非常にまれである.一般に40~60歳での発症が多いが,年齢を問わず発生する可能性がある.男性が女性と比べ約2倍の発生率とされている.発生部位は仙骨が約50%と多く,そのほか頭蓋底が35%,脊椎が15%(特に頚椎が多い)に好発する.
【臨床症状】
疼痛が主症状で,発生部位により腰痛,殿部痛,肛門部痛など多様であり,夜間の安静時痛として現れるときもある.発育は緩徐であり,腫瘍が大きくなってから発見されることがしばしばである.仙骨発生例ではサイズが大きくなると膀胱直腸障害や下肢の神経症状が出現する.
診断のポイント
原因の特定できない殿部痛や下肢の神経症状を認める場合は,本疾患を鑑別疾患として挙げるべきである.単純X線画像では拡張性に膨隆した多房性骨吸収像を認める.CTでは溶骨性病変を,MRIではT1強調像で筋肉と等信号,T2強調像で高信号,ガドリニウムで不均一な造影効果を示す.画像上は骨巨細胞腫,神経鞘腫や軟骨肉腫などとの鑑別が必要である.本疾患を疑った場合にはすみやかに骨・軟部腫瘍診療を専門とする医療機関に紹介し,生検による病理組織診断を行う必要がある.
治療方針
手術による広範切除が原則である.しかし発生部位が脊髄と近接しているため,治癒的切除が困難なことがしばしばある.また仙骨発生例では発生高位により性機能障害,膀胱直腸障害など手術による重大な合併症を生じるリスクが高いため,近年わが国においては重粒子線治療が適応されることが多くなった.重粒子線治療は手術と同等の治療成績が報告され,また良好な機能維持が期待できるというメリットが
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