【外科治療の概念】
関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)は,全身性の炎症性自己免疫疾患であると同時に,関節(滑膜)をターゲットとする運動器疾患でもある.滑膜炎による関節腫脹と疼痛,関節破壊を伴う変形,不安定性,亜脱臼,時に拘縮,強直などにより身体機能障害を生じてくる.薬物療法における目標達成に向けた治療(Treat to Target;T2T)の導入と近年の生物学的製剤,Janus kinase(JAK)阻害薬などによる治療強化が推し進められた結果,低疾患活動性あるいは臨床的寛解となる患者が60%以上に増えた.
しかし,RAの炎症が全身的に鎮静化されても,手・足の小関節に滑膜炎が燻り続けていることがある.感染症などの併存疾患や経済的理由で薬物療法の強化ができずに,関節破壊と変形の進行(不可逆的変化)を生じてくることもある.人口の高齢化に伴い,RAの治療に加えて骨粗鬆症,サルコペニア,変形性関節症,腰部脊柱管狭窄症などのロコモティブシンドロームへの整形外科的対応も必要になっている.
このような環境のなかで,すべての患者が,真の寛解・治癒にまでに到達できておらず,「からだ」と「こころ」に問題を抱えて社会生活を営んでいることが多い.このような患者のアンメットニーズに応えるためには,薬物・リハビリテーション・ケアそして外科治療からなるトータルマネジメントが必要とされている.関節の構造的破壊・変形を生じているRA患者に対する外科治療は,身体機能の改善のみならず生活の質(quality of life;QOL)を高め,真の寛解に向けた有用な補完手段として考えられる.
【頻度】
RA有病率は全人口の約0.65%と推計され,女性は男性の約3.2倍多く,好発年齢は30~50歳代とされてきたが,最近は高齢化の傾向にある.年間RA患者の約5%は外科治療の適応となる.近年,
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/トリアムシノロンアセトニド《ケナコルト-A》
- 治療薬マニュアル2024/メトトレキサート《メトジェクト リウマトレックス》
- 治療薬マニュアル2024/プレドニゾロン《プレドニン プレドニゾロン プレドニゾロン プレドニゾロン》
- 治療薬マニュアル2024/ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム《ソル・コーテフ ヒドロコルチゾンコハク酸エステルNa》
- 今日の治療指針2023年版/変形性肩関節症・腱板断裂性肩関節症
- 今日の治療指針2023年版/関節リウマチの手指変形
- 今日の治療指針2023年版/変形性膝関節症
- 今日の治療指針2023年版/関節リウマチ【外科】
- 今日の治療指針2024年版/関節リウマチの手指変形
- 今日の治療指針2024年版/変形性膝関節症
- 今日の治療指針2024年版/外反母趾
- 今日の整形外科治療指針 第8版/骨腫瘍切除後再建(人工関節)