診療支援
治療

出生前診断
Prenatal diagnosis
澤井 英明
(兵庫医科大学病院 教授(遺伝子医療部))

1.はじめに

 妊娠中の胎児に超音波検査で骨格異常がみつかると,先天性骨系統疾患がまず疑われるが,Down症候群などの染色体異常や,単なる胎児発育不全,正常児のバリエーションの範囲ということもある.疾患を有していても胎児の重症度・予後は多様であり,致死性の重症型から,出生後の特別な管理を必要としない軽症型までさまざまである.どのように疾患を絞り込むかについては,画像診断と遺伝子検査が重要である.


2.出生前診断の手法

 妊娠中の胎児超音波検査の精度・技術の向上と,通常の妊婦健診で超音波検査の計測項目に大腿骨長の計測が含まれることから,胎児の骨格異常,特に大腿骨の短縮を伴う病態は,早期に異常が疑われるようになった.しかし,超音波検査は画像描出の技術的な手腕が必要で,また診断の確定は相当に困難なため,より正確な診断のために,近年は胎児三次元ヘリカルCT検査が施行されるようになった.CTについては設備・施設と読影能力の問題はあるが,実施自体はそれほど困難ではない.CTの診断精度は際立っている一方で,胎児被曝という大きな課題があり,3~15mGy程度の被曝が避けられない(図7-8).ただし,日本産科婦人科学会のガイドラインにおける妊娠中の許容量100mGyは十分クリアしている.また妊娠30週前後であれば,催奇形性の心配はない.

 骨系統疾患の多くは単一遺伝子疾患であるため,羊水や絨毛を用いた遺伝子検査で変異がみつかれば診断は確定する.診断が確定したあとは,遺伝カウンセリングが不可欠である.骨系統疾患の診断には,画像検査と遺伝子検査の両方の利点と欠点を知ったうえで適切な方法を選択する必要がある(表7-3).


3.骨系統疾患に対して出生前診断が検討される具体的な状況のストラテジー

【1】家系内に特定の遺伝性の骨系統疾患がある場合

 家系内に特定の遺伝性の骨系統疾患があり,妊娠初期からまたは妊娠前

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