【疾患概念】
中胚葉と外胚葉由来の異形成を呈する症候群.前腕・手指・下腿・足趾の短縮を伴う四肢短縮・低身長(骨端軟骨異形成),多指(趾)症,歯牙や爪の形成不全(外胚葉異形成),さらに先天性心疾患を有する.1940年にEllisとvan Creveldが報告し,Ellis-van Creveld症候群ともよばれる.10万人に1人の発生とされる.常染色体劣性遺伝で,EVC遺伝子やEVC2遺伝子の異常による.心疾患や胸郭低形成により,乳児期に死亡することがある.
【臨床症状】
①前腕や手,下腿や足の相対的短縮による四肢短縮型低身長.体幹が長く見えるが,肋骨が短いため胸郭は狭い.
②小指多指症,軸後性多趾症(図7-15a,b図).中手骨以遠の重複を呈する多指となる.
③爪の低形成(図7-15a図).
④進行性外反膝,膝蓋骨脱臼(図7-15d図).
⑤歯牙形成不全,口唇形成異常.
⑥先天性心疾患(約50%の異常,心房中隔欠損など).
⑦疎な頭髪.
必要な検査とその所見
単純X線所見において,①脛骨近位端外側骨端核の形成不全(図7-15c,d図),②膝蓋骨脱臼,③末節骨・中節骨の相対的短縮(図7-15b図),④手根骨癒合,⑤乳児期より脛骨近位端の骨端核異常を認める,⑥成長に伴いX脚と膝蓋骨の脱臼が顕著となる(図7-15c,d図),⑦腓骨が脛骨よりも相対的に短い(同じ四肢短縮型低身長を呈する軟骨無形成症とは逆)などの特徴がみられる.
鑑別診断で想起すべき疾患
①呼吸不全性胸郭異形成症:爪や口唇の異常を認めない.
②短肋骨異形成症[多指(趾)症を伴う]:周産期致死性である.
診断のポイント
先天性心疾患や四肢・爪・歯牙などの臨床所見から本疾患を疑う.遺伝子診断が有用である.
治療方針
手術の優先度が高い順は①先天性心疾患に対する手術,②多指(趾)症に対する手術,③外反膝や膝蓋骨脱臼に対する手術(骨端