【疾患概念】
頭蓋骨や大腿骨,上腕骨などの長管骨において過剰な膜性骨化が生じ,骨皮質肥厚や骨幹部の紡錘状肥大を呈する非常にまれな常染色体優性遺伝形式の骨系統疾患で,国内での調査では50人程度の患者が確認されている.1922年にCamuratiが,1929年にEngelmannが症例報告した疾患で,2000年には19番染色体長腕に存在するtransforming growth factor-β1遺伝子(TGFB1)のミスセンス変異が本症の原因と報告された.
【病態】
骨芽細胞の分化・増殖を制御する遺伝子であるTGFB1は骨基質内に多く蓄積されており,その変異により主に長管骨の膜性骨化が過剰に亢進することで四肢の骨痛が生じる.幼児期では筋肉痛様の四肢の疼痛,筋力低下や易疲労性が主な症状であるが,思春期から成人にかけては長管骨の骨幹部に骨痛が出現する.重症例では成人後に頭蓋骨の骨硬化のため神経孔狭窄を生じ,難聴やめまいなどの脳神経麻痺症状が生じる.
診断のポイント
幼児期に発症する四肢の疼痛,筋力低下,易疲労性と,それらに伴う歩容異常が主な症状である.食思不振が続くことがあり,痩身であることも多い.家系内に同様の症状を有する者がいないか問診も重要である.思春期以降では非外傷性の骨幹部痛に加え,難聴やめまいなどの脳神経麻痺症状がないか診察する.単純X線検査では左右対称性にみられる長管骨骨幹部の骨硬化と,時に紡錘状にもなる著明な横径肥大が特徴的である(図7-30図).骨シンチグラフィーで著明な高集積が長管骨にみられる.診断確定にはTGFB1遺伝子変異の検索を行う.
治療方針
確立された治療法はない.幼児期の疼痛に対する鎮痛薬投与は無効で,症状に応じた活動制限と適度な運動による筋力の維持を行う.思春期以降の骨痛に対してはステロイド(プレドニゾロン薬)の経口投与が有効であるが,投与量や投与期間
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