診療支援
治療

Marfan症候群
Marfan syndrome
谷口 優樹
(東京大学大学院 特任准教授(次世代運動器イメージング学講座))

【疾患概念】

 Marfan症候群は,細胞外マトリックスの構成成分の1つであるFBN1遺伝子変異により生じる常染色体優性遺伝の疾患であり,大動脈基部の拡張や大動脈解離,水晶体脱臼,そして特徴的な筋骨格系の表現型を呈する疾患である.5,000人に1人程度の頻度でみられ,25%程度の症例は孤発例とされる.


診断のポイント

 ①改訂Ghent基準(2010)に従い,診断を行う.本診断基準では大動脈基部拡大,水晶体偏位の有無,家族歴そしてFBN1変異の有無に重点がおかれている.その他の特徴的な身体徴候に関しては全身スコアとして合算し,7点以上の場合にも判定根拠とする.

 ②高身長や細長い手足のほかにも,鳩胸や漏斗胸などの胸郭変形,気胸の既往,外反扁平足,眼裂狭小や下顎の後退,長頭などの特徴的な顔貌,皮膚線条,後弯を伴う脊柱側弯症,腰椎MRIでの硬膜拡張などはMarfan症候群を疑う重要な徴候であり,整形外科医は見逃さないように気をつけなければならない(図7-38).


治療方針

 Marfan症候群を疑った場合には,専門施設や循環器内科への紹介を考慮する.整形外科での治療対象となりうるのは,主に脊柱変形,足部変形,骨粗鬆症である.

 ①脊柱変形:軟部組織の弛緩性により変形の進行も速い傾向があり,特発性側弯症よりも早期の治療介入を検討する.Cobb角20°以上の側弯変形が骨成熟前にみられたら装具療法を開始するが,Marfan症候群での装具療法の成績は特発性側弯症の場合よりも不良であると報告されており,最終的に手術療法を要することも少なくない.

 ②足部変形:時に非常に強い外反扁平足を呈し,頑強な足部痛の原因となることがある.また足部の外反に伴った膝関節のX脚変形に起因する膝痛をきたすこともある.幼少期よりみられることも多く,早期に足底板を作成し治療介入する.

 ③骨粗鬆症:本疾患では高率に骨粗鬆症を呈

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